キムヨナは最初、真央に勝てなかった。
トリプルアクセル(=TA:3回転半ジャンプ)が跳べなかった。
自身の本の中でも
「なぜ真央が私と同世代に生まれたの」
と嘆いているほど
キムヨナにとって真央は
厚く高い壁だった。
キムヨナも一時期は
TAを跳ぶ練習をした。
しかし、どうしてもできなかった。
では、TAを跳べないキムヨナがとった戦略は・・・
3回転ジャンプの完成度を上げ
演技力を高めることだった。
そこに、キムヨナ(キムヨナ陣営含む)の「割り切り」を感じた。
この「割り切り」が、人間なかなかできない。
ひとつひとつの動きの完成度を上げることによって
「減点」のリスクを低め
「加点」のチャンスを高めた。
真央陣営は、今回のバンクーバーで「金」を取るために
真央に100%を超える負荷をかけた。
TAを2回跳ぶだけでも大変なのに
その他のジャンプの前後にも
難しい動きを入れて
「加点」を取りにいった。
いわゆる「エレメンツ」というのが
てんこ盛りだったのだ。
これは真央にとって、
日本国民から受けるプレッシャーよりも
この「エレメンツ」を全て成功させる
ということの方が
はるかに強いプレッシャーだったのではないか
と推測する。
真央のコーチ、タラソワとのコミュニケーションも
うまくいっていたのだろうか。
タラソワは、数多くの金メダリストを生んできたが
その事実は、真央にとってのベストの指導者であること
とは、イコールではないはず。
あの「フリー」の選曲をしたのが誰かは不明だが
たまたま昨日見ていた番組で
タラソワが真央に「怒りの表情」を
コーチングしているシーンがあった。
あんな険しい表情の真央は
見ているこちらが辛くなるし
ジャッジに対しても
有利にはたらくとは思えない。
話が遠回りになったが
このエレメンツてんこ盛りのプログラムは
両手にモノを持っているのに
どちらも離さず、もうひとつのモノを
取りに行った
という感がある。
その結果、無理が生じた。
キムヨナは、両手にモノを持って
3つ目を取りに行く時
ひとつを手から離し、取りに行った。
それこそが「割り切り」だと思う。
トリプルアクセルを跳べる真央を「強者」
と仮定し
TAを跳べないキムヨナは「弱者の戦略」
をとり、それを遂行することに全力を傾けた。
キムヨナのジャンプ・演技力はもちろんすばらしいが
キムヨナ陣営の「弱者の戦略」
が奏功した、金メダルの獲得だと感じた。
蛇足ながら・・・
キムヨナのショートプログラムの最後の
「ボンドガールが一発お見舞いしちゃう」
所作に、
私、完全にココロ打ち抜かれちゃいました・・・。
あはっ。